ある年のクリスマス(前編)

大樹は気づいた。
サンタは日本語が出来ないのだと。
毎年もらうプレゼントの微妙な違和感はその為だと。
 
 
僕にとってクリスマスの朝はがっかりすることが多い朝だ。
お父さんは「いい物をもらったね」と言ってくれるが
コレジャナイロボ」とか「ラーメンズのDVD」とか
どちらかというとお父さんが喜びそうなものばかりだ。
お父さんは英語が話せるというので毎年サンタさんに欲しいものを
伝えてもらっているのだがうまくいかない。サンタさんは英語も苦手なのかな?
だから今年は百貨店のチラシに赤丸つけてツリーに吊るしてみたんだ。
これならサンタさんも間違わずにラジコンのロボットを買ってくれるはずだ。
 
うちのイブのご馳走といえば「七面鳥」だ。
お父さんに言わせるとクリスマスといえばそういうことらしいが、
僕の友達の多くは「七面鳥」を食べたことが無いと言ってた。
うちも何年か前は「熊の手」や「サメ」だったりしたので
友達の家とはちょっと違う家なのかもしれない。
 
クリスマスの朝、お母さんがお父さんを叱る声で目が覚めた。
でも、僕はサンタからのプレゼントの方が気になってそれどころじゃなかった。
あわてて見た靴下には何も入ってなかった。
うん、大きすぎて入らないもんね。
って思ったけど周りにはラジコンロボもない
おっきな発泡スチロールの箱しかない。
箱の中から何か音がするのでもしかしたらこの中かも知れないと思って開けてみた
 
出てきたの動きはするけどいうことは聞いてくれないタラバガニだった。
 
お父さんの話ではマジックが裏写りしてて、チラシの裏側の
「特選 活たらばがに オス1尾¥5800-」が間違って来たということらしい。
 
お母さんがなぜが「考えたらわかるでしょ!」って
すごい剣幕でお父さんを怒ってた。
 
ロボじゃなかったけどサンタさんはきっとこれがいいって思ったんだよ。
だって気に入ったんだ 新しい友達を。

明日に続く