うちの犬2
いなくなったキュウを探して両親は保健所にいった。
捕まっていないか。
捕まっても処分されていしまわないようにする為に。
足しげく「動物管理センター」という名の処分場に通った。
そこで一匹の犬と出会った。
子犬というには少し育ってしまった白い犬だ。
処分場の犬たちは自分がこれからどうなるのかおおよそ解っているらしい。
みんな怯えてちじこまっている、虚ろな目をしている、吼えまくっている...
(個人的には動物を処分するより、捨てる人間を処分したほうが手っ取り早いと思う)
そんな中、一匹だけ両親に向かって必死で助けを求めている犬がいた。
あまりの必死さに両親は引き取ることにした。
(保健所で動物を引き取るのにお金がかかることはあまり知られていない)
キュウが戻ってきたら2匹とも飼おうと。
二匹がそろうようにとその犬は「サン」となずけられた。
二匹そろって「サン」「キュウ」らしい...
一緒に暮らすことになったサンではあるがキュウとは少し違っていた。
ちょっとオマヌケなのだ。
助けを求めていたのではなくて、単純に「遊んでくれー」といってただけではないかと
思ってしまうくらい。
ハスキー犬の入った雑種なのでパワーはある上に遊び好き。
俺の部屋の畳を掘ったり、神社の池でアヒルを捕まえようと飛び込んだり、
かなり無茶苦茶。
シャワーが嫌いで
暑さに弱くて(ハスキーだから)
うっすら眉毛があって(オヤジが書き足したりするので余計に濃くなった)
後ろから人のわき腹にパンチするのが得意で、
狭いところを通ることができなくて...
ある日、そんな彼女が散歩中にいなくなったという。
「またか!」とオヤジに腹をたてたが怒っていても仕方がない、
日付は変わっていたが街中を探し回った。
やっかいなことに彼女は普通の犬と違って自分の家まで戻ってこれないのだ。
夜中の3時過ぎまで歩きまわったが見つからない。
さすがに疲れて家にもどったが中々寝つけなかった
夜が明け、7時ごろになってある人が訪ねてきた。
商店街の豆腐屋のおばさんだった。
「たぶん、おたくのサンちゃんだと思うんだけど...」
それを聞いて商店街まで寝間着のまま走った。
一直線の道の向こうには車の横でちょこんと座っているサンが見えた。
うちのオヤジの乗っている車と同じ車種の豆腐屋の車の前で
ドアを開けてくれるのを一晩中待っていたのだ。
車種を覚えているのに家を覚えていない変な犬だと思わず苦笑しながらつれて帰った。
そんな彼女ではあるがひとつ不満がある。
大きいくせに食べ物は小さくないと食べれないんだから
ちぎってあげようとしてるときくらい牙をむきなさんな!