戦慄!怪人雨男!(続き)

ここからの続き
○○男 - ぽりぴぃすらいと
 
その日は朝から晴天だった。
照りつける太陽の下いつものように追加分の事務用品を得意先に届けた。
ありえないほど突然に来た夕立に得意先のビルの軒下から出れないでいた。
空を見上げていたが止むような気配はなかった。
 
ふと、気が付くととなりの男が歌っていた
黄色いレインコートを着た男だ。
「あめあめふれふれとうさんが〜じゃのめでおむかえうれしいな〜」
横顔だけだった
しかも半分レインコートに隠れていた
記憶はずいぶん昔のものしかないし
写真も残っていなかった
だが、美知春は直感した「父」だと。
何を話しかければいいのか思考が追いつかなかった
いや、それ以前に声が出なかった。
 
動けないでいる美知春にその男は視線を向けた。
「すまなかった」とだけ男は言った。
その言葉だけで美知春はすべてを悟った。
父は雨男なのだと。
雨男が降らす雨の正体は愛するものへの
愛情が届かなくて切なくて流す涙なのだと。
レインコートを着た男の頬を伝う涙がそう言っていた。
  
芳野美知晴(28歳,怪人業)は雨男だ。
事務用品の営業を続けてはいるが雨男だ。
父の血を受け継いでいるらしい。
6月の梅雨の時期に誕生した長男をみながら
こいつも雨男になるのかなぁと思った。
 
芳野美知晴は雨男だ。
愛する妻と喧嘩したり、
子供を泣かせてしまったり、
人に誤解されたりすると雨男になる。
たまに流す涙で雨を降らしてしまうこともあるが
それは小雨のようだ。
彼は小雨の雨男のようだ。
 
こんな話やったけ?